注:この記事は、韓国の福祉制度、特に国民基礎生活保障制度における重要な概念について説明したものです。

※ この記事は、2025年版「国民基礎生活保障事業案内」の文書に基づいて作成されています。個人の特別な状況によって最適な選択肢は異なる可能性があるため、この情報はあくまで参考としてのみご利用ください。

「働く能力」の有無の基準

基礎生活保障制度について調べると、「勤労能力」という言葉が頻繁に出てきます。これは想像以上に重要な概念で、勤労能力があるか否かによって、受けられる給付の種類や条件が大きく変わるからです。働けるのに楽な生活を求めて受給者申請をする人がいるのかどうかは分かりませんが、逆に、本当に病気で働けないのにきちんと証明できず、恩恵を受けられない人もいるかもしれません。そのため、国はこの「勤労能力」を非常に重要な判断基準としています。

18歳〜64歳は、まず「勤労能力者」として扱われる

結論から言うと、基礎生活保障制度では、満18歳以上64歳以下のすべての人を、まず勤労能力がある受給者と見なします。この年齢範囲外の満18歳未満または満65歳以上は、当然勤労能力がない受給者と見なされます。つまり、本人が経済活動の主軸となる年齢層であれば、国は特別な例外事由がない限り、「働いて稼げる人」と見なすということです。これがすべての計算の出発点となります。

文書の場所:94ページ / 第3編 調査 > Ⅱ. 勤労能力判定 > 01 勤労能力がある受給者

では、なぜ勤労能力の判定をするのか?

勤労能力があることが基本値ですが、人にはそれぞれ事情というものがあります。病気や怪我でどうしても働けない状態かもしれません。そのような人々を区別するために、勤労能力評価という公式な手続きが設けられています。

この評価は、単に「働ける/働けない」を分けるだけでなく、自分が受けられる給付の種類や条件に直接的な影響を与えます。特に生計給付と医療給付において、この評価は非常に重要な役割を果たします。生計給付の受給者(受給権者)は勤労能力者に対する条件付受給者の指定、医療給付の受給者(受給権者)は医療給付の種別を決定するために、勤労能力評価が実施されると明記されています。

  • 生計給付:勤労能力があれば、「自立事業に参加することを条件」に生計給付が支給されます(条件付受給者)。しかし、評価を通じて「勤労能力なし」と判定されれば、このような条件なしで生計給付を受けられます。
  • 医療給付:勤労能力の有無は、医療給付の1種と2種を分ける重要な基準となります。通常、勤労能力がないと判定されると、病院の自己負担金がはるかに少ない1種受給者として決定される可能性が非常に高くなります。
文書の場所:94ページ / 第3編 調査 > Ⅱ. 勤労能力判定 > 02 勤労能力がない受給者 > (2) > ※

勤労能力がない人、誰が該当する?

では、どのような場合に勤労能力なしと認められるのか、具体的な基準を知る必要があります。大きく分けて3つのタイプに分けられます。

すぐに認定されるケース(年齢、障害など)

以下に該当する場合は、別途の複雑な評価なしで勤労能力がないものと認められます

  • 「障害者雇用促進及び職業リハビリテーション法」に基づく重度障害者
  • 「障害者福祉法」に基づく「障害の程度が重い障害者」
  • 「国家有功者等礼遇及び支援に関する法律施行令」に基づく傷痍等級1級から3級までと判定された人
文書の場所:94ページ / 第3編 調査 > Ⅱ. 勤労能力判定 > 02 勤労能力がない受給者 > A. 勤労能力がない受給者

診断書を提出して評価を受けるケース(病気、負傷)

病気、負傷、またはその後遺症により治療や療養が必要な人が最も一般的な評価対象です。この場合、医師から勤労能力評価用診断書を発行してもらい提出する必要があります。すると、国民年金公団が医学的評価を行い、その結果に基づいて最終的に市・郡・区長が勤労能力がないと判定する手続きを経ます。生計給付や医療給付を申請する場合、この手続きはほぼ必須と考えなければなりません。

文書の場所:94ページ / 第3編 調査 > Ⅱ. 勤労能力判定 > 02 勤労能力がない受給者 > A. 勤労能力がない受給者 > (2)

その他の例外的なケース

上記に該当しない場合でも、以下のような特殊な状況にある場合は、勤労が困難であると認められ、勤労能力がないものと見なされます。

  • 20歳未満の中・高校在学者(在学証明書を添付)
  • 「老人長期療養保険法」に基づく長期療養1〜5級と判定された人(認知支援等級を含む)
  • 希少疾患、重症疾患(がん、重度熱傷患者)で算定特例の対象に登録されている人
文書の場所:95ページ / 第3編 調査 > Ⅱ. 勤労能力判定 > 02 勤労能力がない受給者 > A. 勤労能力がない受給者 > (3)

「家族全員が働けません」→「勤労無能力世帯」の特例

もし世帯構成員全員が勤労能力がないと判定された場合、一般の受給世帯とは次元の異なる、非常に重要な特例(特別優遇措置)を受けることになります。この特例は、生計・医療・住居・教育給付の受給権者全員に適用されます。

勤労無能力世帯の正確な基準

勤労無能力世帯は、単に前述の「勤労能力がない人」だけで構成された世帯だけを指すわけではありません。以下のように、実際には勤労能力があっても現実的に働くのが難しい人まで含めて、世帯員全体が該当する場合に勤労無能力世帯として認められます。

  • 勤労能力があるが、現実的に働くのが難しい人
  • 未就学児の養育者:保育園や幼稚園に預けず、一日中子どもの世話をしなければならない場合
  • 家族の介護者:病気・負傷・障害などで身動きが不自由な家族を一日中介護・保護しなければならない場合
  • 条件付与猶予者のうち特定のケース
  • 妊娠中または分娩後6ヶ月未満の女性
  • 社会服務要員や常勤予備役として法律上の義務を履行中の人
文書の場所:96ページ / 第3編 調査 > Ⅱ. 勤労能力判定 > 02 勤労能力がない受給者 > B. 勤労無能力者だけで構成された世帯

特例の核心:財産基準が大幅に緩和される

自分の家に住んでいると、受給者から外されるのではないかと心配する人が多いでしょう。受給者になるには財産をすべて処分しなければならないと思っている人も少なくありません。しかし、家族全員に勤労能力がない場合は、話がまったく変わります。勤労無能力世帯の最も強力な特典は、財産を所得に換算する際に控除される「基本財産額」の基準自体が非常に高い点です。

文書の場所:174ページ / 第3編 調査 > Ⅳ. 財産調査 > C. 受給者(受給権者)の財産範囲特例 > 1) 勤労無能力者だけで構成された世帯

この特例を受けるには、以下の二つの条件をすべて満たす必要があります。

  1. 基本条件(総財産額):世帯の純財産額(総財産から負債を引いた金額)が以下の基準金額以内であること。
  2. 追加条件:金融財産が一定金額(大都市5,400万ウォンなど)以下であり、財産価値が100%所得として計上される高価な自動車を所有していないこと。

つまり、通常世帯の場合、定められた基本財産額分をないものとする財産、あるいはその程度は持っていても基礎生活受給者になるのに問題ないと見なされる財産として認められますが、ここに勤労無能力世帯の特例が適用されると、この上限額が以下のようにさらに高くなります(左が勤労能力がある一般世帯に適用される基本財産額、右が勤労無能力世帯に適用される特例です)。

  • ソウル:9,900万ウォン → 1億4,300万ウォン
  • 京畿:8,000万ウォン → 1億2,500万ウォン
  • 広域市/世宗/昌原:7,700万ウォン → 1億2,000万ウォン
  • その他地域:5,300万ウォン → 9,100万ウォン
文書の場所:174ページ / 第3編 調査 > Ⅳ. 財産調査 > C. 受給者(受給権者)の財産範囲特例 > 1) 勤労無能力者だけで構成された世帯 > (2)

これはどういう意味かというと、もし特例の基準金額(例:ソウルの1億4,300万ウォン)を超えなければ、その財産は完全に0ウォンとして扱われ、所得に換算されないということです。所得として計上される財産がないので、受給者になる可能性が飛躍的に高まります。

では、この特例基準を超えるとすぐに失格になるのか?そうではありません、これが重要です。文書によると、もしソウルに住む勤労無能力世帯の財産が1億5,000万ウォンで、特例基準(1億4,300万ウォン)を超えたとしましょう。この場合、当該特例は適用できなくなり、一般世帯と同じように所得換算制度を適用しなければなりません。つまり、1億4,300万ウォンを控除するのではなく、一般世帯の基準である9,900万ウォンを控除し、残りの超過分についてのみ所得換算率を適用することになります。特例の恩恵が受けられないだけで、一般世帯と同じ土俵で再審査されるため、必ずしも失格になるわけではありません。

文書の場所:176ページ / 第3編 調査 > Ⅳ. 財産調査 > C. 受給者(受給権者)の財産範囲特例 > 5) 注意事項 > (1) 控除順序など

その他の特典もある

財産基準の緩和以外にも、扶養義務者の所得基準が緩和されたり、北朝鮮離脱住民の特例、保障費徴収対象からの除外など、さまざまな有利な条件が適用されます。

文書の場所:96ページ / 第3編 調査 > Ⅱ. 勤労能力判定 > 02 勤労能力がない受給者 > B. 勤労無能力者だけで構成された世帯 > (ボックス)

働けるのに働かないとどうなる?→「条件付受給者」の宿命

条件不履行?本人の生計給付のみが停止される

もし勤労能力がある受給者が、国が定めた自立事業に参加するという「条件」を正当な理由なく履行しなかった場合、ペナルティが課されます。

ペナルティの核心は、条件を履行しなかった受給者本人の生計給付の全部または一部を支給しないことができるという点です。世帯全体の生計給付が中断されるのではなく、正確にその人1人分だけを引いて支給される方式です。同一の所得認定額で世帯員が1人追加されたことにより増加する生計給付額を、「本人の生計給付額」と見なします。

文書の場所:261-262ページ / 第4編 給付の実施 > Ⅲ. 給付種類別の詳細内容 > 7) 条件付受給者に対する生計給付 > B) 条件不履行時の生計給付停止

では、どれくらい減額されるのか?(計算例)

文書に記載されている例を見ると、確実に理解できます。

  • 例1:4人世帯 / 月所得認定額50万ウォン / 1人が条件不履行 → 元の生計給付:1,951,287ウォン – 500,000ウォン = 1,451,287ウォン → 条件不履行者本人を除いた3人基準で支給:1,608,113 – 500,000 = 1,108,113ウォン支給
  • 例2:1人世帯 / 月所得認定額15万ウォン / 本人が条件不履行 → 元の生計給付:765,444 – 150,000 = 615,444ウォン → 全額停止(0ウォン支給)
文書の場所:262ページ / 第4編 給付の実施 > Ⅲ. 給付種類別の詳細内容 > 7) 条件付受給者に対する生計給付 > (ボックス) 例

まとめ

  • 基礎生活保障制度では、18歳〜64歳はまず勤労能力者と見なされます。
  • 病気、障害、学生、妊娠、介護など特別な事由があれば、評価を通じて「勤労能力なし」と認定される可能性があります。
  • 世帯員全員が勤労能力がないと認められる「勤労無能力世帯」は、財産控除額が大幅に引き上げられるなど、非常に強力な特例優遇措置を受けられます。
  • 勤労能力者が自立事業への参加条件を破ると、世帯全体ではなく本人分の生計給付のみが停止されます。
  • 結論として、自分が「勤労能力」の有無のどちらに該当するのか、そして自分の世帯が「勤労無能力世帯」の特例に該当するのかを正確に知ることが、受給資格を決定し、より多くの恩恵を受けるための重要な鍵となります。